まず総評。 †
『アニメノチカラ』枠の3作は、故意か偶然か、いずれも同じタイプのラストを選んでいます:
『主人公たちが、その住む世界を崩壊させるような争いを未然に防ぐために、それに立ち向かい・阻止して世界を守る。』という視点。
この形自体は別に珍しいものじゃない、王道とも言える話。
各人がその目標に向かって死力を尽くし、紆余曲折をたどって、達成する。
そういう『チカラ』を描いた作品群として、わりとまとまっていると思いました。
ともあれ問題は、それぞれの作品の着地が納得いくかたちかどうかってのは、1つのポイントになったのかな、と思います。
ソラノオト感想。 †
というわけで本題、『ソラノオト』感想。
友瀬的感覚を端的に言ってしまうと:
本当は『音楽や伝説を背景に、人間の生きる・つながる魂の力』を描きたかったのに。
『リアルな描写ゆえに、少人数チームの限界を描いてしまった』作品、かな。
全編を通じて、部分部分の描写は細やか・リアル・同意できる内容で、この観点では評価は高いです。
ただ、きれいなブロックを組み立てたからといって、全体像が美しく仕上がる保証はない、という感じか。
物語の前半で描かれていたのは:
いわゆる『第二次世界大戦ころ』程度の文明レベルの世界。
主人公たちは、配備はされているけれど戦力は期待されていない、お飾りの守備兵。
そんな配備が許される理由がわかる舞台:戦後の傷跡は多々残るものの、基本的には平和な、辺境の小さな街。
物語の中心にあった『ソラノオト』==『ラッパ・音楽』によってつながる魂。
そういう狭い範囲・少人数・個人規模で繰り広げられる、優しい人間ドラマでした。
この部分に対しては、友瀬はなんの文句もない、好作品です。
対して後半、物語の〆に選ばれたのが『ある地域における軍隊の、戦場での直接衝突阻止』。
この、物語前半での『小規模世界』とは相反する、『個人・少人数の力でなんとかできる範囲』を越える大きすぎるモノを対象に選んだがゆえに。
それを描写しきれず、なんとなく中途半端で納得しづらいラストになってしまった。
最終的に衝突を止めたのが『親衛隊の戦車群』と『王女の宣誓』というのが、象徴的。
前半で紡いだ『ソラノオト』を、美しく生かせていない。
一応は『停戦ラッパという命令では止まらない→アメージンググレイスでの魂は届いた!』という進軍停止はきれいだったんですが。
これでハッピーエンドと言うには、対象が大きすぎたんです。
だから結局『親衛隊』という物的な力と、『王女の宣誓』という論理的な説得が必要になってしまった。
こういう『ソラノオト』以外の何かに頼らなければ、ストーリーを落とせなかった。
そもそもなんで『進軍ラッパ』かといったら、人間肉声による突撃命令は、戦場では届かないからなんですよね。
それを顧みて『王女の宣誓』で〆るのは、ラッパの立場がない。
これは一つの象徴的な話で、それ以外でも後半:王女様発覚あたりから後の展開は、そこまでに描かれていたストーリーとはだいぶ趣・規模・方向性が変わってしまっている。
『ソラノオトの強さと限界』、『個人の限界』、『友情・チームワーク』を描きたかったのであれば、それはそれで成功だと思いますが、それでも『前半と後半との規模・方向性の違い』から、納得しづらいと言う点は変わりません。
・・・主人公の位置も、問題なのかもしれないですね。
結局話をまとめたのは、王女・ミオで、しかし彼女はストーリー途中で離脱。
『テレビに映らない部分で奮闘』していたわけですから。
ご意見などがあれば。
端的に言ってしまえば:
『超能力スパイアクション』。
『組織』に属した『超人』達が、『密命』を達成するために死力を尽くして活動する。
そしてその『個人の信念』と『組織の理念』との間で葛藤・苦悩する。
いい意味で昭和の香り漂う、『おとこのこ』の大好きな冒険活劇的な好作品だと思います。
つーか、キャラ配置もそんな感じだよね。
『カッコいいタイプの青年2名』が主人公&『ちょっと引いた位置にいる』ヒロインって、
昨今の『おとこのこ』向けアニメ作品にはなかなかない配置だと思う。
こういう作品で酒が飲めると、うまいと思うんだけどな(笑)
ラストエピソードも、先の『ソラノオト』との対比を見ると、よくできている:
この作品で主人公たちの阻止対象は『敵指導者1人』と『核爆弾1発』の2つだけ。
総勢4名のチームが阻止する対象として、理解できる範疇。
もちろん超能力アクションだから、普通の人よりもできることは多いですけど・・・変な話、『007』にだってできそうな任務です(笑)
その阻止活動がギリギリになって『1人が残って阻止、しかし行方不明に』なんてのも、王道展開でしょう。
マイナスポイントは:
物語後半で、主人公の1人が『味方組織の理念』と『敵側の理念』との天秤で、敵側に離脱するところ。
これを判断理由を視聴者が理解できるだけの『その個人の信念』が伝わってこないのが問題で、なぜ裏切ったのか・なぜ後に戻ってきたのかが見えない。事前・事後通じて。
このあたりは、群像劇の弱点というか、そういう感じの部分。
主人公が1人なら全ての事情を描写できるんでしょうけど、群像でそれは冗長になりがちですから。
その意味で、すべての物事が説明できなきゃいけないとは言わないですけど、納得しづらいのは事実、かな。
ご意見などがあれば。
端的に言ってしまえば、まさにタイトル通り:
『オカルティックなSFアクション』ですかね。時間旅行もオカルト、と考えたうえで。
終始一貫した世界観が『オカルト現象はあって当然・不思議じゃない』で。
その手の現象そのものの詳細真相については『投げっぱなし』なので、それを『オカルトだから仕方ないよね』と受け入れるのが大前提です。
それが難しい人には評価が下がるんじゃないかな。例えば『のどっち@咲』には拒否される作品(笑)
余談ですが、このあたりは『学園黙示録 HotD』にも通じます。
『真相がすべて説明されないとダメ』という評価も理解はできますが、それだけで捨てるにはもったいない作品は多いよ、と思います。
で、そういう意味で『なんでもあり』の世界観のわりに。
ストーリーを『2話1組』できちんと尺を確保して、友情・家族愛を丁寧に描いているのが好感。
もちろん『どうしてそんなことができる・おきるんだ!』という突っ込みどころは多々あるんですが、それは『オカルト』なので。
それさえ許容してしまえば、それなりに納得できる描写なのがよい。
例えば、1話・学園長と悪魔召喚の話。
あれ、悪魔召喚と死者復活という『オカルト的存在』は仕方ないんですが、それらをそれなりに『起こりえる事実』として認めれば。
ストーリー的には、そんなにおかしくはない:つじつまが合って理解できる。
ラストを含めた方向性も同様:『世界滅亡の阻止』という巨大・漠然とした目標を、『ノストラダムスの鍵という、1つのアイテムの破壊』という『個人で十分手の届く小さなモノ』に絞っているという点。
これは理解しやすい。
ただ、それを差し引いても、登場人物たちの性格・行動が極端すぎるのが、難点だと思いました。
マヤ、短気過ぎ。
文明、お調子者過ぎ。
その他も『メガネ探し過ぎ』『ダウジングしすぎ』『ポエム書き過ぎ』とか。
このあたりが、友瀬的に受け入れづらいがゆえの、減点。
あともう1点:問題があるとすれば、ラストバトルの結果が説明困難なところ、かなぁ。
友瀬的には:
『最初の時点では、やっぱり美風が鍵だった。』
→『文明が未来から送り込まれた結果未来は変わって、美風が滅んで文明が鍵になった。』
→『でも文明が頑張って、再び未来が変わった。』
・・・と解釈したけど。
この場合、上記2度目の『阻止』ができた理由がどこにあったのか、説明しづらいんだよね。
まあ、これは『オカルトだから仕方ないよな〜』と納得するしかないんですが(笑)
ご意見などがあれば。
- ○tokazakiさん。
ああ、なるほど。そういう解釈もあるかもしれません。
未来には多少のブレがあるけれど、『鍵』がある限りは着地点は『滅亡』に固定されていた。
『鍵』がなければその着地点も「ブレ」の範疇になる、と。
いずれにせよ、予定調和を否定したら物語なんてのは成り立たないので、それはいいんじゃないんでしょうか(笑) -- ともせ%管理人。
- こんな視点もありますよ。「前提:現在の認識は過去の観測の結果による」「鍵:ゲートが繋がった現状の未来へ続くものという意味では終始【美風】のみ」「観測時間:【美風】が排除されたのは分岐点より前の日」よって、【美風】が排除された時点では未来は未確定になっただけ。作中のラストで分岐点を突破して新たな未来が確定した。ってな感じでどうでしょう?(この論法の欠点は、ちょっと視点をずらすとラストのドラマは全て予定調和って話にも持って行ける所(^^;) -- tokazaki?